鈴木商店と

●はじめに

 この新しいコラムは、資料の利活用を図るために、横浜正金銀行資料という貴重な素材のなかから垣間見ることのできる物語を紹介するものです。
 横浜正金銀行資料は、第二次大戦前の日本で、外国為替専門の特殊銀行として重要な役割を果たしてきた横浜正金銀行に関する膨大な資料群です。そこから歴史家が描き出すことのできる物語は多様なものがあるでしょう。このコラムでは、史料のなかから筆者の関心をひいたものを選び、そこから明らかにできることがらを示すことによって、こうした貴重な資料の可能性を示し、多くの研究者に関心を持ってもらいたいとの願いから執筆したものです。
 取り上げるのは、鈴木商店関係の資料です。2016年9月くらいから、本格的に史料を読み始めて、何かまとめたいと思っている旅の途中に出会った史料です。第一次大戦期の日本経済の急拡張を象徴する存在だった神戸の貿易商鈴木商店の経営実態は、資料的な限界も大きく、これまで桂芳男さんの先駆的な業績や台湾の産業発展と関連した研究などが数えられるものの、断片的な事実が明らかにされるに留まっていました。この限界を打開できる可能性が横浜正金銀行資料にはあります。
 これまで知られている範囲では、鈴木商店関係の社史、『台湾銀行史』、日本金融史資料の金融恐慌関係資料、そして東京大学図書館にある帝国興信所の調査書などが知られています。
 これに対して、横浜正金銀行資料には、主として鈴木商店を対象としてまとめられた文書綴りがあります。具体的には、

①『株式会社鈴木商店 大正七~九年』(横浜正金銀行資料、『仮目録』の資料番号41-03:37)、
②『特殊取引先断片記事 鈴木商店 大正七年~大正十一年』(41-03:38)、
③『鈴木商店 大正十二年~昭和六年』(41-03:39)、
④『鈴木商店 爪哇糖シンジケート 鈴木関係会社 豊年製油会社』(41-03:40)
⑤『取引先篇』二冊(60-01:73~74)

です。これらは鈴木商店関係の報告等について、各種の資料綴りから旧銀行史編纂過程で抜粋しタイプ印書してまとめた綴りで、「岸資料」という名称で分類整理されているものです。このうち、④と⑤が最もまとまっている、ほぼ同一内容の資料です。そこで、このコラムでは、⑤をガイド役にしながら、資料から浮かび上がる鈴木商店像を紹介してみたいと思います。なお、横浜正金銀行資料は既に半数以上がマイクロで公開され、それぞれの概要について「解題」で解説していますので、それも参照してください。
 なお、資料については適宜句読点を付したり、脱字などの箇所に補筆したり、旧字を新字に改めたりしています。
未定稿ですから、この原稿の引用については著者の許諾を必ず得るようにしてください。また、気がつかれた誤りなどがありましたら、ご指摘いただければ幸いです。

連絡先 takeda194904[at]gmail.com
※電子メールアドレスは[at]を半角@に直してお使いください。

●略歴

武田晴人
1949年4月東京に生まれる。1979年3月東京大学経済学研究科博士課程単位取得退学。1979年4月東京大学社会科学研究所助手、1981年4月東京大学経済学部助教授、1991年6月同教授(2015年3月まで)。専攻は日本経済史。

第1回もう一つの大連事件

第2回管理の不在

第3回1920年恐慌

第4回海外市場の評判

第5回震災前後

第6回援助ハ他ニ之ヲ為ス銀行ガ存在スルヲ以テ

第7回二ヵ年内ニハ全部決済サルルナラン

第8回正金銀行と鈴木商店

<関連書籍のご案内>

鈴木商店の経営破綻 横浜正金銀行から見た一側面
著者:武田晴人、定価:本体4800円+税
ISBN:978-4-8188-2472-0
判型:A5判、頁:224頁
刊行:2017年09月
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